2025.12.18
アメリカ赴任中のM主任へインタビューその1
アメリカケンタッキー州にあるグループ企業オネストンアメリカコーポレーション。
今回は単身赴任しているM主任に「現場のリアル」と「海外で働くということ」を語っていただきました。
M主任は入社して12年、2024年1月からオネストンアメリカの製造現場で働いています。
質問 1. 赴任前の心境と準備
■赴任が決まったとき、率直にどう感じましたか?
包み隠さず正直に言うと、とても落ち込みました(笑)赴任者は自分ではなく他工場の候補者で考えていると言われたことや、私くらいの年代の独身者には申し訳なくて打診しない、と言われていた時期もあったので、内心自分が行かなくても良くなった、と思える時期もあったのでなおさらでした。
私は3回オネストンアメリカに出張させてもらっていたので、仕事面はもちろん、生活面のイメージはかなりしやすかったです。特に仕事面は基本的にやることが日本の小牧工場時と同じなので、人数が少ない分、良い意味で緊張感も少なく、のびのび仕事ができるイメージがありました。また現地のMオフィスマネージャー(女性)ともお会いしていることで、初対面よりは関係性が構築出来ている点も良かったです。
今後営業の方の出張が続くと聞いていますが、製造部でも同じように研修での出張を推進していけば、赴任をネガティブに考えている候補者も考えが変わることがあり得ると思うので、機会があれば製造部も若手~中堅の出張を提言したいと考えています。
■赴任前に準備したこと、しておけばよかったと思うことは?
【準備したこと】
アメリカでは安い物はその分品質が悪い、品質が良い物は価格も高いという傾向があるようです。そこで、圧倒的に品質が良い日本の日用品を選び、日本の百均や無印良品で日用品を多く買いました。真っ先に思いつくものは洗濯ネットです。
家電はほぼアメリカで買いそろえましたが、炊飯器だけは日本で買ってきた方が良いと思います。服も四季分持っていきましたが、基本アメリカで買ったものを着ているので、そこまで多くはいらなかったと思いました。他は漢方などアメリカで入手が難しそうな物を多めに持って行きました。
【準備しておけばよかったこと】
私は赴任を言い渡されてから赴任までの期間が短かったので出来ませんでしたが、少しでも英会話教室に通いたかったです。(学生時の英語が残念な成績でしたので)
質問2. 現地での仕事と現場の違い
■アメリカの製造現場で最も驚いたことは?日本との違いを感じる場面(安全意識、作業手順、報連相など)は?
日本より圧倒的に品質の許容範囲が広いと感じます。日本の公差に対する厳しさに慣れているとアメリカではすごく楽に感じます。そういった風習なので、逆に鋼材や焼入れの品質が悪いです。鋼材は6面フラットが全然出ていなくて厚みがバラバラなものばかりで、焼入れは日本とは比べ物にならないほど歪んで返ってきます。その辺りがお国柄だと感じました。
点検などで来てくださるサービスマンも、かなり散らかして片付けずに帰るので嵐が去った後のような光景になります。
質問3. 単身の生活面
■生活環境(住まい、食事、移動手段など)の違いと工夫していることは?
住居は出張時に1ヶ月ほど住んだことのあるアパートに住むことにしたので、内装も周囲の環境も把握しており不満なく過ごせています。大きく違うことは、アメリカ人は靴を履いたまま室内で過ごす人が大半なことや、会話、テレビ、音楽の音量が大きく、壁も薄いので近隣の部屋の音がストレスです。気にしない方は問題ないと思いますが、騒音に繊細な方は角部屋や最上階の部屋を探すなど、工夫が必要だと感じます。
住居に関して思うことは、単身であれば規約内での家賃の上限を越えずに探すことが簡単ですが、家族帯同の方は物価上昇の影響で年々前任者に比べ住居の選定が大変そうだと感じました。難しいことだと思いますが、家族帯同の方の上限を増やすことも必要になってくると感じました。
食事は最も苦労するポイントだと思います。アジアンマーケットで日本の物も買えますが、やはり高額なのでそこだけを頼りに生活はできません。チップ制度もあり外食も高いので、食生活は死活問題です。日本食が恋しくなり、日本のコンビニがいかに優れているかを認識させてくれます。
移動手段は基本的に車になり、よほどの都会でないと電車はありません。ダウンタウン以外では歩行者をみかけることはほぼありません。こちらの車の運転は一言でいえば野蛮です。きちんとウィンカーを出して曲がったり進路変更したりする車の方が少ないです。急な割込み、後方での煽り、これらは日常茶飯事です。運転が得意でない方は慣れるまでは大変かもしれません。
良い点は、長距離の移動はアメリカの方が快適です。高速道路は無料で、制限速度も70マイル(112キロ)の区間が多いので、スピードが出せて快適です。
■単身ならではの「孤独感」など、感情面の変化は?
個人差がある部分だと思いますが、私の場合は日本ではあまり一人で行動することがなかったので、とてつもない孤独感があります。私は日本で「どこに行くか」も大事ですが、「誰と行くか」に重きを置いていたので、何をするにも一人で、楽しさは半減しています。
買い物もセルフレジで済むので、土日は数回サンキューと言う以外は声を発しないこともしばしばあります。日本では休みの日には家にいないことが多かったですが、赴任以降は若干引きこもり気味になってしまいました。それはそれで楽しみ方があるのでネガティブな感情のみの発言ではありません(笑)
質問 4. 中堅社員としての役割と責任
■入社10年を超えてからの赴任ですが、若手の頃と比べて意識の変化は?
若手の時は指示を受けて動くことが多かったのですが、今は判断する場面や任される事が増え、責任の重さを改めて感じています。特にHACFは作業者が2人しかおらず、それぞれにしか出来ないこともあるので、自分がしっかり動かないと工場全体の流れが止まってしまう場面もあります。そのため、日々の作業だけでなく段取りやフォローも含めて、現場を支える意識をより強く持つようになりました。
少人数ならではの負荷はありますが、その分自分が現場を回している、という責任感を持って取り組んでいます。
質問5. 文化・価値観のギャップと乗り越え方
■「これは通じなかった!」という文化ギャップのエピソードは?
日本では感謝の意で頭を下げると思いますが、こちらでは不思議がられます。それでも反射的に頭を下げてしまいます。
きれいな包装・丁寧な梱包文化がなく、鋼材などは包装が破れて打痕がついているものもよく見かけます。
■逆に「これは意外と通じた!」という日本的な考え方は?
アメリカではExcuse meやThank youを必ず言うので、少し違うかもしれませんが、ありがとうやすみませんとよく口にする。日本人の謙虚さ、丁寧さはある意味それに通ずると思いました。
■言葉以外で信頼を築くために意識していることは?
私の場合、悲しいくらい英語が苦手なので、心掛けているのはとにかく笑顔で対応することです。こちらの人は日本人より圧倒的に気さくなので、英語が浮かばず困っていても笑顔でいれば嫌な対応はあまりされません。もちろん例外もありますが。
質問 6. 自分自身の変化と成長
■赴任を通じて、自分の中で変わった価値観や考え方は?
異国の人々と関わってみて、日本人との考え方の相違を実感しました。赴任当初はそれが嫌だと感じることもありましたが、生活に慣れていくうちに受け入れられることも多くなり、赴任以前より柔軟な考え方が出来るようになったと感じています。
■製造現場での経験が、今後のキャリアにどう活きると思いますか?
少人数で現場を回す中で、自分の判断や行動が日本での実務時より大きく工程全体に直接影響することを実感しました。責任感や段取り力、優先順位の付け方など、業務を効率よく進める力が多少は身についたと思います。
質問 7. これから赴任する方へのメッセージ
■赴任前に「これだけはやっておくといい!」というアドバイスは?
アメリカでも買える物、買えない物、日本で買っておいた方がいい物などをよく調べて用意することです。また交通ルールが全然違うので、少しだけでも学んでおくといいと思います。
■現場で信頼されるために大切なことは?
今までされて嫌だったこと、言われて嫌だったことを反面教師にして、しない、言わないように気を付けています。日本勤務時代のことですが、後輩に対しては1日のうち少しの時間でも雑談することで、話しかけやすい関係性になれればと思い心掛けています。
最後に、赴任を「楽しむコツ」を教えてください!
趣味がある方は休日に趣味を楽しめるように、必要なものはケチらずに準備を万全にしたほうが良いと思います。国が違えば考え方が違うので、何で?と思ってしまう対応が多々ありますが、アメリカではそれが普通なんだ、と思うことで気持ちが楽になります。
飲食店で注文に対してオプションはいらないと言ったのに、有料オプションがついてきました。その時は本当に話をちゃんと聞いてないな、と思ったのですが結果的にそのオプションが大正解で、次回から必ずつけようと思いました。このように日本ではあまり考えられないこともありますが、終わってみれば良かったと感じられ、笑い話としてオチもつく体験となっています。

